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朧月夜
2005年 04月 01日 (金) 17:08 | 編集
夜の空気の冷たさが和らいで、昨日、東京ではようやく開花宣言がありました。
空気中の水蒸気は淡い霞となって、冬場は何度も見えたはずの富士山や、遠くの街並みを、
ぼんやり、更に遠くに押しやって、風景は刻々と春の顔に変貌を遂げつつあります。

昼間の霞は、夜になると同じ現象でも朧と名を変えるそうで、朧に霞む月夜はかの「朧月夜」。
でも、霞や朧は原因の特定できない現象のため、気象用語としては使われないのだそうです。

朧月夜と言えば思い浮かぶのは、中島美嘉の唄う童謡か、あるいはその名前とは裏腹に、
しっかりとした輪郭を持つ、源氏物語に登場する「朧月夜」。
彼女は光源氏の政敵の娘でありながら、源氏と不義密通を重ね、
やがては露見して須磨へと流される原因となった女性です。

源氏物語の巻の名はどれも美しい響きを持っていますが、
彼女が登場する巻も「花宴」(はなのえん)と、内容に相応しい華やかな巻名が付けられ、
冒頭は紫宸殿の桜の宴の様子から始まります。

宴も終わり、酔いを帯びた源氏は、このまま帰るのも惜しくなり、
運良く藤壺に会えまいものかと、弘徽殿の辺りを徘徊(?)し、
そこで、「朧月夜に似るものぞ無き」と詠いながら歩く女性と出会います。

この本歌は、歌人、大江千里・(おおえのちさと・新古今集)の、
「照りもせず 曇りもはてぬ 春の夜の 朧月夜にしくものぞなき」を引用し、
女性らしく言い換えたものと言われています。
---「照るというわけでもなく、かといって雲に覆われてしまうわけでもない
春の夜の朧月夜に及ぶものはない」---

登場する女性達の中でも才気煥発なキャラクターが印象的な朧月夜ですが、
源氏物語の他の女性の例に漏れず、固有名詞というものが見当たりません。
「朧月夜に…」と口ずさんで出てきたことで、後世「朧月夜の君」と呼ばれるようになったのです。

これは源氏物語に限ったことではなく、江戸時代に至っても、
有名武将の妻であろうがその生年や出自が明らかでない事も多く、
家計図には「女」とだけ記されていたりします。
何だか気の毒に思いながら、その名も無き女性達も愛でてきたであろう桜を、
今年も楽しみにしたいと思うのです。
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